facebook twitter

header_SocialLogoあなたのソーシャルネットワークでログイン

Fuji Sankei Business-i on RSS

◀ ニュース一覧に戻る

写真ニュース詳細

日本とブラジル モザンビーク農業を支援

2012年08月19日

 アフリカ南部のモザンビークで、日本とブラジルが支援する農業開発プロジェクトが本格化へと動き出す。日本政府は農業投資への円借款供与や海外投融資の活用を通じ、日本の民間資金を現地に呼び込むことを想定しながら、モデル事業の具体化を急ぐ。

 もっとも中国や米の穀物メジャーもモザンビークとの関係強化に動くなどライバルは多い。日本は官民連携で農業技術支援や人材育成に取り組み、差別化を図りたい考えだ。

 「入植の手続きはどうすればいいか」「予備調査の調査団を早く出したい」
 ブラジルの農家や農機メーカーの担当者が、モザンビーク政府の関係者に次々と具体的な質問を浴びせる。

 4月に現地を訪れた日伯の官民調査団に参加した日本の大手商社マンらは、ブラジル側の投資意欲と熱気に圧倒されたという。

 プロジェクトの舞台は、北部の熱帯サバンナ地域。ブラジルを世界トップの大豆生産国に押し上げる原動力となった農業開発モデルの再現を目指し、先進国と新興国が途上国を支援する「三角協力」の形で進める。

 凶作による米国の大豆輸出禁止を機に、ブラジルではセラードと呼ばれる広大な荒れ地を1979年から約20年間かけ、日本の円借款や技術協力で農地に変えることに成功。ブラジルとタッグを組めばこの体験に加え、モザンビークと同じポルトガル語圏という強みも生かせる。

 開拓者精神にあふれるブラジルの官民は2013年末には本格的な試験栽培に乗り出す構えで、7月には政府機関や財団がファンド創設をいち早く発表した。

 「ブラジルの農業と、日本が持つ農業技術や流通機能を組み合わせれば、最高の補完関係を築ける」。調査団のブラジル団長、西森ルイス議員は日本との協力の意義をこう話す。

 調査団には三井物産や住友商事、丸紅、双日など8社の日本企業が参加したが、天候に左右される農業への直接投資には慎重さを崩さない。

 ただ「穀物の集荷や輸出ターミナル運営などの流通分野であれば、商社機能が生かせる」(住友商事の岩倉真樹・地域総括部部長代理)。肥料プラント事業などとの相乗効果も見込めると、ビジネス展開を描く。

伊藤忠商事は、みそや油脂メーカーら10社と立ち上げた研究会で現地でのゴマや大豆の開発を検討し、輸入先の多角化で安定供給につなげることを狙う。

 ブラジル側が具体化を急ぐのは、モザンビークに関心を寄せるのが日伯連合だけではないからだ。その一つが中国。首都マプートから車で約3時間のガザ州の道路沿いに最近、中国湖北省の農業公団の立て看板が立った。

中国はいまや年間5500万トンと世界の大豆貿易の約6割を海外から調達する輸入大国だけに、アフリカでの農地確保に余念がない。スウェーデンの企業も現地の農地を購入している。

 それ以上に手ごわい相手も先手を打ってきた。世界最大の穀物メジャーの米カーギルは3月、現地で4万へクタルの土地を購入し、大豆や小麦の生産に乗り出すと発表した。

搾油や飼料工場の運営は手掛けるものの、リスクがある農業経営には距離を置いてきただけに、カーギルの「本気度」が垣間見える。

 食糧不足への懸念を背景に、新興国を中心に途上国への農業投資の動きが数年前に広がったが、国際世論の反発を招いて最近は鳴りをひそめる。これに代わる流れが「食糧安全保障と栄養のためのニュー・アライアンス」と呼ばれる農業投資だ。

 政府支援を呼び水に民間資本を呼び込むもので、「責任ある農業投資」として今年の主要国(G8)首脳会議(サミット)で打ち出された。政府のお墨付きを得る形で、農地争奪戦は激しさを増している。

 日本の課題も少なくない。ブラジルのセラード開発は日の丸プロジェクトにもかかわらず、事業終了後には、農家への融資や資機材調達などを支援した欧米の穀物メジャーが農作物の流通を握ってしまった。これを教訓に、日本への安定調達に結びつける取り組みが欠かせない。

 政府の関与もポイントだ。日本側には「農家への融資や穀物輸出ターミナルへの投資を急ぐべきだが、民間だけではリスクを抱えきれない」(大手商社)と支援を求める声が強い。

 米国やロシアなどの干魃で今夏、穀物価格が高騰。食糧の調達先多様化に向け、生産地の開拓は重要性を増している。

モザンビークでは日本企業が石炭や天然ガスの開発・調査に乗り出しており、資源外交との連携も視野に入れる必要がある。(上原すみ子)